
「通信制高校に進んだら、大学進学はあきらめることになるのだろうか」。進路を考えるとき、多くの中学生や保護者の方が引っかかるのがこの点です。
結論からお伝えすると、通信制高校から大学へ進学することはできます。ただし、全日制とは進め方が少し違います。この記事では、文部科学省の資料や統計をもとに実情を整理します。実際の進学率、3つの入試ルートの使い分け、指定校推薦の実態、調査書や評定の扱い、そして受験対策の組み立て方。あわせて、2027年4月に開校予定の雨ニモマケズ高等学校が考える進路のつくり方も紹介します。
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通信制高校から大学進学はできる|まず押さえたい3つの事実

最初に、制度のうえで確定していることを3つ整理します。
1. 通信制高校を卒業すれば「高卒」になる
通信制課程は学校教育法にもとづく高等学校の課程です。卒業すれば、全日制と同じく「高等学校卒業」の学歴になります。
2. 大学の出願資格は課程で区別されない
文部科学省の「大学入学者選抜実施要項」では、大学に出願できる者を「学校教育法第90条ならびに同法施行規則第150条および第154条の規定により大学の入学資格を有する者」と定めています。通信制課程の卒業(見込み)者はここに含まれます。「通信制だから受けられない大学がある」という決まりは、制度上ありません。
(参照: 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」)
3. 3つの入試方式すべてに出願できる
大学入試には一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜の3つがあり、通信制高校の生徒はこのすべてを使えます。
高卒認定試験(高認)との違い
高認に合格すると大学の受験資格は得られますが、文部科学省は「高等学校を卒業しなければ最終学歴は高等学校卒業とはなりません」と明記しています。
(参照: 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験とは」)
入試の実務にも違いがあります。高認合格者は在籍校がないため調査書を出せず、成績証明書で代えることになっています。そのため、高校長の推薦と調査書を前提とする学校推薦型選抜は原則として使えません。通信制高校を卒業すれば調査書が発行されるので、学校推薦型選抜も選択肢に残ります。ここは通信制高校を選ぶメリットです。
データで見る、通信制からの大学進学

前提として、通信制高校で学ぶ人は増え続けています。令和8年度の学校基本調査(速報)によると、高等学校通信制課程の生徒数は31万2千人で、前年度より7千人増えて過去最多となりました。
(参照: 文部科学省「令和8年度学校基本調査の公表について(速報)」)
大学進学率は10年で上がっている
文部科学省「学校基本調査」をもとにした集計では、通信制課程の卒業生の大学進学率は次のように推移しています。
| 年度 | 大学進学率 | 大学進学者数 |
|---|---|---|
| 2015年度 | 13.5% | 6,974人 |
| 2020年度 | 13.9% | 8,446人 |
| 2022年度 | 18.0% | 12,772人 |
| 2024年度 | 21.2% | 17,917人 |
10年間で進学者数は6,974人から17,917人へ、2倍以上に伸びています。
進学先の内訳
2024年度の進学先の内訳は次のとおりです。
| 進学先 | 割合 |
|---|---|
| 大学(学部) | 21.2% |
| 専修学校(専門課程) | 22.3% |
| 大学・短期大学の通信教育部 | 3.0% |
| 短期大学 | 2.0% |
| その他の進学 | 3.2% |
| 進学の合計 | 約51.7% |
大学のほかに専門学校へ進む人も多く、進学全体では卒業生のおよそ半数にのぼります。
(参照: リクルート進学総研「高校の通信制課程 その現状と卒業生の進路変化」/文部科学省「学校基本調査」にもとづく集計)
全日制との差はある。その背景も知っておく
同じ集計で、全日制・定時制の大学進学率は58.4%です。通信制の21.2%とは差があります。この数字は、正直にお伝えしておきたいところです。
ただし、この差をそのまま「通信制は大学に行きにくい」と読むのは早いかもしれません。背景には次のような事情があります。
- 進路の幅が広い: 専門学校への進学が22.3%と大学とほぼ同じ割合を占め、就職を選ぶ人も少なくありません
- 在籍している人の状況が多様: 働きながら学ぶ人や、いったん社会に出てから学び直す人も在籍しています
- 受験勉強を学校の授業以外で組み立てる設計になっている: 後述するように、対面での授業時間が制度上少なく設定されています
つまり進学率の差は「通信制では無理」という意味ではなく、進め方を自分で設計する必要があるということです。その設計は、これから説明する入試ルートの選び方でかなり変わります。
大学進学の3つのルートと、通信制での使い方

大学入試は2021年度から名称と枠組みが整理され、一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜の3つになりました。それぞれの性格と、通信制での使い方を見ていきます。
まず、実際にどのルートで大学に入っているのかを確認しましょう。令和7年度の入学者の内訳は次のとおりです。
| 区分 | 一般選抜 | 総合型選抜 | 学校推薦型選抜 |
|---|---|---|---|
| 私立大学 | 38.3% | 22.8% | 38.8% |
| 国公立大学 | 76.3% | 7.3% | 16.5% |
私立大学では、入学者のおよそ6割が総合型選抜か学校推薦型選抜で入っています。一方、国公立大学は今も一般選抜が中心です。
(参照: 文部科学省「令和7年度国公私立大学入学者選抜実施状況」)
一般選抜|学力で勝負する王道ルート
学力検査を主な資料として合否を判定する方式です。課程による有利・不利はなく、試験の点数で決まります。自由に使える時間をそのまま学習時間に振り向けられる人に向いています。
学校推薦型選抜と、指定校推薦の実情
学校推薦型選抜は、出身高校の校長の推薦にもとづき、調査書を主な資料として評価する方式です。このうち、いわゆる「指定校推薦」について、正確に知っておきたいことがあります。
「指定校推薦」は国が定めた制度名ではありません。 文部科学省の実施要項に出てくるのは「非公募型の学校推薦型選抜」という表現で、「指定校推薦」という語は使われていません。実態としては、大学と高校のあいだの個別の取り決めです。国が枠を配分しているわけではありません。
では、通信制高校に指定校推薦の枠はあるのでしょうか。答えは「ある。ただし学校によって差が大きい」です。
たとえばクラーク記念国際高等学校は、公式サイトで「全国約320以上の大学から1,400超の指定校推薦枠が利用可能」と公表しています。
(参照: クラーク記念国際高等学校「進路実績」)
一方で、枠の有無や数を公表していない通信制高校もあります。「通信制だから指定校推薦はない」は誤りですが、「どの通信制高校でも同じようにある」わけでもない、というのが実情です。
枠の選考基準について、第一学院高等学校は「レポートなどの提出状況・スクーリングの出席率・定期試験での成績」を挙げ、「在学中のすべての期間が評価対象」と説明しています。日ごろの積み重ねが見られると考えておくとよさそうです。
注意: 「通信制は全日制より指定校推薦の枠が少ない」という説明をよく見かけますが、課程別の枠数を集計した公的な統計はありません。志望校の枠があるかどうかは、学校説明会や個別相談で直接確認するのが確実です。
総合型選抜|通信制と相性がいい理由と、よくある誤解
総合型選抜は、詳細な書類審査と時間をかけた面接などを組み合わせて、意欲や適性、目的意識を総合的に評価する方式です。通信制の生徒と相性がいいと言われるのには、制度上の理由があります。
- 公募制である: 実施要項は「入学志願者自らの意志で出願できる公募制」と定めています。高校長の推薦も指定校の枠も要りません。志望校に自分の学校の枠があるかどうかに左右されません
- 本人が書く資料が必ず評価に使われる: 活動報告書、大学入学希望理由書、学修計画書などです。学校での集団活動の記録の厚みに、評価が依存しにくい構造になっています
- 面接やプレゼンテーションが必須: 実施要項は、面接(ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問等を含む)による評価を必ず行うと定めています
時間を自由に使える通信制の特性を活かして積んだ活動や資格を、そのまま評価の材料にできる。ここが相性のよさです。ただし誤解も広まっているので、次の2点は押さえておいてください。
- 「学力不問」ではありません: 2021年度から、総合型選抜でも学力を評価する方法を必ず一つ以上使うことが求められています。個別テストや大学入学共通テスト、小論文、資格・検定試験などです
- 調査書は必要です: 総合型選抜でも調査書は提出します。「調査書が要らない入試」ではありません
スケジュールが早い点にも注意が必要です。令和9年度入試では、総合型選抜の出願は2026年9月1日以降、発表は11月1日以降。学校推薦型選抜は出願が11月1日以降、発表が12月1日以降です。準備の開始時期を逆算しておきましょう。
調査書と評定はどう扱われるか|欠席が気になる人へ

「今まで学校を休みがちだったけれど、調査書に響かないだろうか」。これは進路相談でとてもよく出る質問です。制度にそって整理します。
通信制でも評定は出る。呼び方は「学習成績の状況」
調査書は、在籍する高校が生徒指導要録にもとづいて作成します。通信制課程も指導要録に評定を記録するため、調査書は同じように作られます。かつて「評定平均値」と呼ばれていたものは令和2年度から「学習成績の状況」という呼び方に改められました。計算方法は全課程で共通で、すべての科目の評定の合計を評定の数で割って算出します。
学校推薦型選抜で求められる水準の実例
学校推薦型選抜では、出願条件に学習成績の状況の基準が設けられることがあります。実際の募集要項では次のような水準が使われています。
| 大学 | 求められる学習成績の状況 |
|---|---|
| 会津大学(公立・2026年度 学校推薦型選抜) | 3.8以上 |
| 中京大学(私立・2026年度) | 方式・学部により 3.0以上/3.2以上/3.8以上 など |
大学や学部、方式によって幅がありますが、おおむね3.0〜3.8程度が実際に使われています。日ごろのレポートと試験の積み重ねが、そのまま出願の選択肢の広さにつながります。
通信制には「欠席日数」という概念がない
ここが、いちばんお伝えしたい点です。
調査書には出欠の記録を書く欄がありますが、その内容は指導要録から転記されます。そして通信制課程の指導要録は、「出欠の記録」ではなく「出校の記録」を記載します。文部科学省の規定では、通信制課程について「出校日数」=「実際に生徒が出校した年度間の総日数を記入する」とされています。
(参照: 文部科学省「高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等」)
つまり、通信制には全日制と同じ意味での「欠席日数」がそもそも存在しません。過去に学校を休みがちだったことが、通信制で学び直したあとの調査書にそのまま数字として残り続ける、という仕組みにはなっていないのです。
あわせて、令和9年度入試では、調査書の出欠の記録のうち出席停止・忌引き等の日数は記載しないことになりました。また実施要項は、やむを得ない理由による欠席がある場合に「志願者本人が不利益を被ることがないよう配慮する」ことも大学に求めています。
受験対策をどう組み立てるか

制度のうえで道は開かれています。では実際の学習はどう進めればいいのか。ここは通信制の設計を理解しておく必要があります。
卒業要件と、対面授業の時間
通信制高校の卒業要件は、74単位以上の修得と、特別活動を卒業までに30単位時間以上受けることです。学習はレポート(添削指導)、スクーリング(面接指導)、試験、メディアを利用した学習の組み合わせで進みます。
注目したいのが面接指導の標準時間です。高等学校学習指導要領は、1単位あたりの標準を次のように定めています。
| 教科・科目 | 添削指導(回) | 面接指導(単位時間) |
|---|---|---|
| 国語・地理歴史・公民・数学 | 3 | 1 |
| 理科 | 3 | 4 |
| 芸術・外国語 | 3 | 4 |
1単位時間は50分です。一方、全日制の授業時数は週30単位時間を標準とし、年間35週行うことが標準とされています。対面で授業を受ける時間は、制度上そもそも大きく違うということです。
(参照: 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編」 )
だから「自由な時間をどう使うか」が分かれ目になる
この設計は、裏を返せば時間が自由に使えるということです。大学受験に必要な学習量は、学校の授業だけでなく自分の学習計画のなかで確保していくことになります。これを「大変そう」と受け取るか「自分のペースで積み上げられる」と受け取るかで、通信制からの進学の見え方は変わります。
学校選びで確認したいこと
進学を考えるなら、学校選びの段階で次を確認しておくと安心です。
- 進学希望者向けのサポート(個別指導、進路相談、受験対策の講座)があるか
- 志望する大学の指定校推薦の枠があるか
- 総合型選抜の対策(志望理由書の添削、面接練習)を受けられるか
- 進路相談をどのくらいの頻度で受けられるか
- 学校外での活動や資格取得を、どう評価・記録してもらえるか
- レポートや試験のスケジュールを、受験の準備と両立できそうか
- 卒業生の進路実績が公開されているか
特に最後の項目は、説明会で率直に聞いてみてください。進路にどういう考えで向き合っている学校なのかは、話せば伝わるものです。
雨ニモマケズ高等学校が考える、進路のつくり方
雨ニモマケズ高等学校は2027年4月に開校を予定している広域通信制・単位制の普通科高校です。開校前のため、卒業生の進路実績はまだありません。 ここは正直にお伝えします。
そのうえで、雨ニモマケズ高等学校が用意しようとしているのは、進路が「受験の結果」だけで決まらない環境です。
学びの経験が、そのまま進路の材料になる
雨ニモマケズ高等学校の学びは教室の中だけで完結しません。大阪キャンパスは知の交流拠点「ナレッジキャピタル」内、広島キャンパスは行政・文化施設が集まる中心部、東京キャンパスはお茶の水エリアにあります。企業との協働プロジェクトやインターンシップ、街全体をキャンパスにするフィールドワークを日常的に行い、各界の第一線で生きてきた大人が「特別教授」として関わります。
ここで積んだ経験は、進路を考えるうえでそのまま材料になります。総合型選抜で問われる「何に取り組み、何を考え、大学で何を学びたいのか」は、こうした経験から書けるものだからです。志望理由書のために慌てて活動を探すのではなく、日々の学びがそのまま自分の言葉になっていく。それが雨ニモマケズ高等学校の目指す進路のつくり方です。
※確認中の仮掲載: 進学サポート体制(受験対策講座、指定校推薦、進路指導の具体的な内容)は現在準備中です。確定しだい公式情報でお知らせします。
「人生を急がないための学校」を掲げていますが、これは進路をあきらめる学校という意味ではありません。自分のペースで学びながら、その先の進路にもちゃんとつながっていく。そういう設計を準備しています。
よくある質問(FAQ)
ここからは、よくある質問にお答えします。
Q. 通信制高校から大学進学はできますか?
できます。通信制課程を卒業すれば高等学校卒業の学歴となり、大学の出願資格が得られます。一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜のすべてに出願でき、課程によって受験できない大学があるという決まりもありません。
Q. 通信制高校の大学進学率はどのくらいですか?
文部科学省「学校基本調査」をもとにした集計では、2024年度の通信制課程卒業生の大学進学率は21.2%(17,917人)です。10年前の13.5%から上昇しています。専門学校などを含めた進学全体ではおよそ51.7%です。
Q. 通信制高校に指定校推薦の枠はありますか?
あります。ただし学校によって差が大きいのが実情です。全国320以上の大学から1,400超の枠を公表している学校もあれば、枠を公表していない学校もあります。志望校の枠があるかどうかは、学校説明会や個別相談で確認してください。
Q. 通信制だと調査書で不利になりませんか?
調査書の作成方法や学習成績の状況の計算式は、全課程で共通です。また通信制課程の指導要録は「出校の記録」を記載する仕組みで、全日制と同じ意味での「欠席日数」という概念がありません。過去の欠席がそのまま数字として残り続ける仕組みにはなっていません。
Q. 総合型選抜なら学力がなくても大丈夫ですか?
「学力不問」というのは誤解です。2021年度から、総合型選抜でも学力を評価する方法を必ず一つ以上使うことが求められています。個別テスト、大学入学共通テスト、小論文、資格・検定試験などが使われます。調査書の提出も必要です。
Q. 雨ニモマケズ高等学校の進学実績を教えてください。
雨ニモマケズ高等学校は2027年4月に開校を予定しているため、卒業生の進路実績はまだありません。進学サポートの体制については現在準備中です。どのような考えで進路に向き合うのかは、個別相談で直接お聞きいただけます。
まとめ|道は開かれている。あとは組み立て方
通信制高校から大学に進学することは、制度のうえでも実際のデータのうえでも可能です。卒業すれば高卒の学歴が得られ、3つの入試ルートすべてを使えます。大学進学率も10年間で13.5%から21.2%へ上がってきました。
全日制との差はありますが、それは「通信制では無理」という意味ではなく、進め方を自分で設計する必要があるということです。指定校推薦の枠は学校によって差があるので志望校ごとに確認する。総合型選抜は指定校枠に左右されず自分の意志で出願できる。調査書の欠席日数を心配しなくてよい。こうした事実を知っているかどうかで選べる道は変わります。大切なのは、自分に合ったルートを早めに見つけて、そこから逆算して準備を始めることです。
雨ニモマケズ高等学校がどんな学校なのか、自分の進路とどうつながるのか。気になることは個別相談や説明会で直接お聞きください。LINEで気軽に質問できる「LINEなんでも相談室」もあります。LINE・Web・お電話・説明会のいずれからでもお申し込みいただけます。あなたのペースに合わせて、ていねいにお話しします。
まっています。